ヒダマルのラノベ講座。

ヒダマルが考える、ライトノベルの作り方。来たれ小説書き。

『私は毎日二ミリずつ小さくなっているらしい』への回答。

 

 はなまるさん、この度はサービスのご購入誠にありがとうございます。

 商品ページの「よくある質問」にも記載している通り、ここに記載している意見は「ヒダマルの考える意見や感想・アドバイス」であり、絶対ではありません。

「キャラクターについて」「設定・ストーリーについて」「文章について」の三項目について述べています。それと、「六章について」及びご質問を最初にまとめています。


 創作活動、応援しています。
 よろしければまた、ご検討くださいませ。

 

 

〇六章について。

 一話ラストの「二度と、人間に心を開かない」が効いてるなぁと感じます。まさに「最悪の事態」で、クライマックスにうってつけの障害です。もうひと面白来るぞ、と伝わります。

 一話の始めがシュウくん視点で、時系列の前後があったのはちょっと分かりにくいかなと思います。既に事件が起きている点はスピード感を上げますが、「クロマルが攫われた」という大問題を明かすのには早いかな? と。(それで言うと、章タイトルでネタバレしてるのも?)(章タイトルのネタバレはweb小説的にはそんなに問題ないかなとは思いますけど)

 

 妹のキャラが確立されていない段階で行動に及んでいたので、先に妹がどんなキャラクターなのかは知っておきたいと思います。言動は「誰がやったのか」も大事な焦点になるためです。急に現れたキャラより、これまで存在していたキャラ(できれば信頼していた相手)が悪いことをやったほうが意外性が生まれます。

 六章の頭で登場するとしても、もう少しキャラを伝えてから事に及んだほうが恐ろしさが増しそうです。名前が明かされていないので「エクーの妹」としか呼べないのももどかしいさを感じます。

 なぜかエクーとすれ違いで穏やかに訪ねてきて、おもてなししてお話して、クロマルを抱いて撫でて、でも途中から不穏な空気が漂い始めて「翻訳うちわの故障?」とか考えるも「存在力が足りなくてかわいそう」「あなたはマスターにはなれない」「この子はクロマルなんて名前じゃない」などの台詞の後に歌を歌い始める、といった流れなら、緩急がつきそうです。

 

 この妹がとにかく子供っぽく救い難い性格と手段で動くキャラですが、「共感しにくい」という点がデメリットだと思います。クロマルとシュウに拒絶されて怒って帰るというあっけなさなので「何しに来たんだ」というか、読者としては消化不良な感じがします。「好きになれる余地」がないというか。

 ユエへの想いがどのくらいなのかも含め、はじめのカナとの会話、あとのシュウとの会話で、キャラを立たせる必要を感じます。心からユエを想っていてその子のパートナーになるのを夢見ていて、シュウに窘められると共にカナとクロマルの絆を思い知らされて諦めたり子供らしい涙を流すなどすると、この「好きになれる余地」が設計できそうです。

 後日談はせめてエクーからなにかしらのフォローがあったことや、妹からお詫びの手紙や贈り物があったなどの情報はほしいかなと思います。

 

 

 話をストーリーに戻して、妹にクロマルを連れ去られた後、地球人なめんなよ! で二話が終わり(ラジコンに乗るとは明かさない)、三話のシュウくん視点で街中を暴走する操縦者不明のラジコンカー、待てよ見覚えがある、タダゴトじゃないぞ! となれば緊迫感を煽れそうかなと思います。

 

 地球人なめんなよ! と決意するタイミングも、もう少し後にずらして、シュウくんとの一体感と共に感じることにしても盛り上がりそうです。

 連れ去られて追いかけようとするも、妹の正論を思い出して身体が固まり、あの子とならもっとうまく宇宙を飛べる、クロマルはそっちのほうが幸せなんじゃないか、と絶望することもできます(今より重く、長く)。そこで、クロマルとの思い出の品を視界に入れるか手に触れるかしてこれまでの記憶がよみがえっていいや、とりあえず追いかける! と涙ながらに行動する→シュウに拾われて一緒に追う中で気持ちが通じ、二人で一緒の決意をする、でも面白いかなと。

 

 シュウがお姉さんから離れて妹を探しに行く際、お姉さんとのつながりが途切れることに寂しさを覚えるような一瞬があってもよさそうです。そして、キーホルダーに勇気づけられるなどです。

 

 ドローンの登場がこのままではちょっと唐突なので、エクーがラジコンを改造してくれた、という情報と共に「興味深いものがあったのでついでに購入して改造してみた」などの理由でドローンの存在を明かしておくといいと思います。「いや、こんなの乗らないよ」「(ちょっと残念そうなエクー)」「もしかして使うかもしれないしね! ありがとうね!」「そうだろう。もう少し改良してあげよう」などのコメディとして使っておけば、印象に残すと同時に馴染ませられると思います。

 

 ドローンでの初飛行が「上昇して、大きく旋回してみる」と蛋白な描写に終わっているので、プロペラが回転を始める際の勢いや音、上昇時の浮遊感(浮遊感がするのかGがかかるのか? けっこう勢いよく飛びあがりますよね)などをもう少し丁寧に描いてみるとよさそうです。プロペラですから、近くで高速回転しているとかなり怖そうです。

 ガルーラの本性むき出しのクロマルも同様に、クロマルは速い。クロマルは強い。と淡々としているので、文章に物足りなさを感じます。はじめに襲い掛かってきたときのような描写を、空中でも見せてほしいと思います。

 

「クロマルが正気を取り戻す」「カナが落ちる」「シュウがお姉さんの落下を知り、探す」の情報開示順が、うまく噛み合ってない印象です。

「クロマルが正気を取り戻す」「カナが落ちる」の順序だと、「クロマルが助けるのだろう」と予想できるので、実際の展開はそれを踏まえて更に意外なものが求められます。シュウがカナを探すシーンはクロマルとカナが仲直りした後なので、読者としてはハラハラしません。

 例えば「カナが落ちる」を先にして、「シュウがお姉さんの落下を知る(妹と別れたときに空を見て、など)」「必死に探すも、いない」「そして、空を見上げると」(ちょっと時系列戻って?)「クロマルの背に乗ったカナ視点」「クロマルが正気を取り戻した! 仲直り」「(シュウ視点)夜空に躍るクロマルとお姉さん」などです。

 

 

〇ご質問について。

1、公募に出す場合、一話が短過ぎる?

 一話ずつが短いと、話がぶつ切りになってしまう恐れはありますが、その危険はあまり感じませんでした。おねえさん視点と僕視点が一話ずつ交互に繰り返される、となると入り込みにくくなるかもしれませんが、現状では問題ないのではと感じます。後半へ行くにつれて「一話ずつ交互に」の部分がありますが、その地点では既に感情移入を済ませているので、問題ないと思います。

「引き」に関しては、連続して読まれる「一冊の本」と考えると、ちょっとくどい可能性はあります。公募に際しては削ったほうがいいかな? と思います。

 

2、中盤で話が動くまでは、淡々と小さくなるゆえの生活描写と心理描写のみで進みます。私はそれを楽しんでもらいたいと考えて描いたのですが、意図する効果は出ていない?

 7の「ぶっちゃけ、私の作品はweb向きではないのでしょうか?」も含めますね。

 なろうの感想欄が阿鼻叫喚だったとのことですが、確かにweb小説向きではない、少なくとも「小説家になろう向きではない」と言えそうです。

 

 ただ、「web小説向きではない」は「面白さが足りない」という意味ではありません。まったく違います。「面白くいのに何故か読まれてるweb小説」、わんさかあります。不思議でなりません。世知辛いというかなんというか、作者のフォロワー数や宣伝の仕方によっても「読まれるか否か」が変わります。正直な所、そういうやり方は嫌いです。個人の感想ですが。

 

 話を戻して、現状、web上で読まれている作品は「異世界転生」であるとか「悪役令嬢」であるとか、異世界を舞台にしたファンタジックな作品です。(ここは本気で分析したわけではなく、肌感覚です)(学園もので人気な作品もありますし)

 もっと言えば「ラノベ」なんですよね。(「この作品がラノベか否か」は後で言及します)ラノベっぽくない作品で勝負しようと思うと、他の作品に比べて読者の母数が少ないこともあり、なかなか読まれないのではと思います。

 

 やっと本題ですが、中盤までの淡々とした日常生活、面白いです。イイと思います。秘密を抱えた女性と幼い恋心を抱く少年の関係、好きです。

 ただ、ラノベっぽくはないという一点で、web向きではないと感じます。すなわち、webにいる読者には、面白さが伝わりにくいかもしれません。
「意図する効果」は出ているのですが、web小説でその面白さが求められているか、という問題です。

 

3、隣の中学生について

 恋愛要素があることで作品がブレているのでは、とのことですが、そんなことはないと思います。むしろ恋愛要素が入っていることで面白さが増しているし、削るのはもったいないです。少年の淡い恋心、いいです。ラストの爽やかさに繋がりますし、絶対に削って欲しくない要素です。

 ダブル主人公であることを、あらすじなどであらかじめ伝えておくと、途中で中学生視点になった際に違和感を持たれることはなくなると思います。公募の場合は梗概で伝えられますし、むしろ心配ないと言えます。

 

4、物語が中盤で大きく動きます。SF風味のファンタジー展開です。ここで読者がゴッソリ減りました。展開に無理がありますか? 発想が陳腐ですか?

 これですよね。ここが難しいというか、最も指摘したい点です。

 発想が陳腐だとは思いません。毎日二ミリずつ小さくなる様子、その原因が飼い猫にあり実は宇宙怪獣だったなど、陳腐で片づけられる想像力ではないと思います。ずばり「展開に無理がある」です。

 だからといって、直ちにSF部分を修正する必要もないと感じます。「ストーリーについて」で詳しく言及します。

 

5、女性主人公の割に、地の文が固いでしょうか?

 特にそんなことは感じませんでした。柔らかいし、読みやすいです。

 シュウくんのお母さんの視点がおねえさんの考え方や言葉遣いとあまり変化がなかったので、被ってしまっているとは感じます。それまで登場しなかったキャラですし、そちらにリソースを割くのは悪手だと思います。物語の構成要素は、せめて真ん中あたりまでにはすべて揃えておくのが通常です。

 

6、電撃小説大賞への挑戦を視野に入れております。傾向と対策など、教えて頂けると助かります。

 これはもう、「Web小説」と「一冊の本」との違いです。

 まず「一冊の本」ですが、この形態では「この分量の中で、最高の面白さを実現する」必要があります。電撃大賞をはじめとした賞レースは基本的に「一冊の本」を求めています。限られた文字数を使って、どれだけ大きな面白さを実現できるか、という勝負です。

 対して、ウェブ小説は「連載小説」なので、各話ごとに見せ場が要求されます。「連載漫画」を想像すると分かりやすいと思います。『ワンピース』にしても『NARUTO』にしても、「何の盛り上がりもない回」はありませんよね。仮に物語全体はぶつ切りになったとしても、「あまり盛り上がらない回」は基本的に悪手です。

 

 そして、字数制限がない。これも大きな違いです。

 ちょっと上から目線かもしれませんが……、公募勢からすると、web小説勢の物語の運び方にはあまり緊張感がありません。(作者としての緊張感です)
「限られた文字数の中で、最高の面白さを味わわせなければならない」という緊張です。無駄なシーンを書いている余裕はありません。「一冊の本」の中で、クライマックスに効いてこない情報を入れている暇もありません。

「クライマックスらしいクライマックスのないweb小説」も多いです。そうした小説は中くらいの山場ばかりで、例えば「この10万文字までが『一冊の本』だ」という意識がありません。Web小説から出版し「一冊の本」にするにあたり、編集さんからクライマックスの追加を要求されるという話は、実際になろうから書籍化したプロの方に聞いたことがあります。

 

 Web小説にはweb小説の面白さがあり、求められているものが違うため、一概にどちらが上とは言えません。しかし、この緊張感を知っておくのは作者としていい経験になるのではと考えています。逆に、「各話ごとに見せ場を作る」というweb小説の技術は、それはそれで大いに意識すればいいと思います。ヒダマルはこちらが未熟です。

 

8、ラノベで女性主人公は避けた方が良いですか? そもそも私の作品はラノベなのかも良くわかりませんが、⑧の話を何度か耳にしました。

 ラノベ主人公と言えば、確かに男が思い浮かびます。女性主人公である理由が特段ないのであれば避けた方が無難というか、参考になる作品が増えるので書きやすいと思います。
 しかし、絶対に駄目なわけでもありません。面白ければいいですから。


 問題はむしろ、「この作品はラノベなのか?」です。個人的には、「どちらかというと、ラノベではない」と感じます。ライト文芸、というカテゴリーが近そうです。
少なくとも、このままで「電撃文庫」の一冊として出版されることはなさそうだと感じます。ただ、電撃大賞には「メディアワークス文庫」も含まれているので、そちらからなら、こうした小説があっても違和感がないと思います。なので、応募が無駄というわけではありません。むしろ電撃は間口が広いので、こうした作品は電撃大賞をお勧めします。

 

 面白くないのではありません。「ラノベとしての面白さは足りない」というだけです。ジャンルの問題です。BBQを食べたい読者に美味しいフランス料理を出しても「ちがう、そうじゃない」となってしまいます。

 はなまるさんの欲求や技術の問題になります。BBQを作りたいのか? フランス料理を作りたいのか? です。どちらにしても、自分が何を作っているのか、誰に何を提供したいのかをはっきりさせておく必要があります。

 

 ラノベっぽくするとしたら、まずは男主人公。ヒロインが小さくなっている、その様子をちょいエロ含めて楽しんでいくも、ある日どこかで「このままじゃ本当にまずい」と受け入れて解決の道を探り始める半日常もの・半冒険もののような仕上がりが一般的だと思います。

 あるいは女主人公でも、ガルーラを追ってきたエクーは良い宇宙人かと思えたものの本当はクロマルを連れ戻そうとしており、クロマルを連れ去られてしまう。一度はあきらめるも一念発起、クロマルを追って改造ラジコンを駆るミニ主人公。

 エクーがばらまいた存在力の餌により周辺のガルーラが狂暴化、このままでは人類滅亡。なんとかクロマルと再会したカナだったがもう一息のところで滅亡阻止できなさそう。そんなとき、クロマルとの初飛行を実現。からの、クライマックス。解決。

 かつての相棒の子を立派に育てるため、ガルーラのためだけを考えて行動していたエクーだが、人間とガルーラの絆の強さを魅せつけられて改心。地球でガルーラが生きていくことを認め、母星との橋渡し役になる。

 といった展開が「ラノベっぽい」と感じます。「ピクサー映画っぽい」でも良さそうです。

 

「ラノベとしての面白さ」で勝負したくないのなら、そっちは切り捨てて良いと思います。「キャラ文芸としての面白さ」を追求してください。ただ、webでは読まれにくそうです。その意味では、公募向けであると言えます。

 

 

〇キャラクターについて

 カナの、現実を受け入れたり否定したり、先々を見越して対策したりする心理と行動が素敵だと感じます。この作品の「読みどころ」というか、「お楽しみ」部分です。

『スパイダーマン』で糸を出す練習をしている場面や『アイアンマン』で高級車コレクションをことごとくダメにしてしまう場面と同じ種類の面白さを感じます。

 

 後半に出てきたシュウくんのお母さんと思考がやや被っている点がもったいないなぁと感じます。シュウくんのお母さんは必ずしも物語に登場させなくていいというか、視点人物にしてまで描くと、力点が分散されます。後半である点もあり、これも「話がちがう」感覚のひとつです。「え、ここで視点人物追加?」という。

 

 シュウくんはかわいい。かわいいです。クロマルよりかわいい。たぶん、人気投票で一位になります。「カナリ」「シュウ」「クロマル」「エクー」でやってみてはいかがでしょう。

 少年特有の無力感、やり場のない恋心、葛藤、いざとなった際の行動力、いやらしいそぶりのない温かさ、実は包容力ある、好きです。ダブル主人公の問題点を削るのではなく、このまま突き進むべきだと思います。キャラが少ないので描写の力点が分散されにくいですし。シュウの恋心を排除した『私は毎日二ミリずつ小さくなっているらしい』は読みたくありません。

 

 エクーですが、登場が唐突でついていけず、脱落する読者が多いのだろうと想像します。

 例えば、中盤に入る前にシュウが見かけ、「まさか、おねえさんがあんなに小さく」と思って追いかけるも見失い、カナの家に突撃するもふつうに女の子が出てきて「?」となる、あれはいったい何だったのだろう……、といった描写があれば、「小さくなっている人が、カナ以外にも存在する?」という疑問が生まれます。エクーを出す下準備です。

 

 

〇設定・ストーリーについて

 設定に関する話と多くが重複するので、一緒にします。

 一章で物語の前提・主人公の状況を伝え、二章では主に「僕」とおねえさんの夏祭りの様子。三章ではクロマルの秘密と、話の運び方が丁寧で綺麗だと思います。あらかじめ考えられて構成されている印象を受けます。


 四章の七話で、シュウがエクーから情報を知る場面ですが、読者が既に知っている情報を繰り返すことになるので、ちょっと冗長かもしれません。
 既に真実を教えてもらい呆然としている様子から始まって、

「カナリさんは承知しているんですか?」
「ああ。ガルーラは共に生きる覚悟のない者とは、決して契約を交わさない」

など、要所だけを訊ねて確認する、という手もあります。ちょうど、シュウのお母さんに話を聞かせたときのようにです。

 

〇物語の世界観について。

 最近見るようになった一連の夢の中で、クロマルは本能に抗っていた。悲鳴をあげるような、空腹とは別の飢餓感のようなものが伝わってきた。

「最近見るようになった夢」に唐突感があります。日常の些細なことまで丁寧位に切り取って描写してきたので、そんなそぶりはなかったのに、という違和感です。その後、「クロマルは空を飛ぶ」という事実を受け入れているのも早い。「これってこういう話だったの?」と思われてしまう恐れがあります。というより、そう思われてしまったから、読者が離れたのだろうと想像します。

 

 途中まではリアルで、縮んでいく恐怖と日常生活の問題・幼い恋心からの行動と関係変化の行方、といった主題で進んできたところに、それらと親和性のないファンタジー要素が出てきたら、ちょっと驚きます。

 リアルな生活を主題にするのならその舞台で実現され得る方向性を提示してほしいと感じます。少年のまっすぐな思いや、依存する猫へのかかわり方などで、希望や絶望を伝えてほしいです。

 

 ファンタジーを出すのなら、序盤からある程度匂わせてほしいと思います。このお話にはファンタジー要素もあるんですよという前提を活かしてこそ、中盤からの新展開も説得力のあるものになると感じます。

 

 例えばですが、はじめから途中までは『ポケモン』だったけど、途中から終わりまでは『スター・ウォーズ』のようなことです。途中まで『ポケモン』で来たのなら、ポケモン世界の前提を元にした展開が欲しいと感じます。例えば、「ポケモンは人類を侵略するため宇宙からやってきた使者だった、しかし主人公のパートナーだけはその運命に抗い……」などです。これなら『ポケモン』からの『ポケモン+α』になります。途中までの前提を活かした形で、大きな転換が可能です。こうした「転」であれば、読者も望むところです。

 しかし、これまで(中盤に差し掛かるまで)の物語の前提や世界観と関係ない方向から新要素が出てきたら、「話が違うじゃないか」と感じます。

 

 一方で、その後も面白いは面白い。

 クロマルの秘密が発覚した直後、シュウくんベランダ事変などです。キャラの価値観、行動理由が物語にハマっています。ここだけ取れば前半の流れをしっかり汲んだ構成です。事件を起こして話を前に進めています。

 つまり、新たに出てきたSF設定を受け入れてしまえば十分に面白いんです。でも、受け入れがたい。唐突だから。これが、作品の最大の弱点です。前半と中盤以降を融和させる必要があります。うまくいけば、見違えるはずです。


 例えば、「背が縮まない日もある」という発見は、かなりの大事件です。毎日二ミリずつ縮んでいく、というお約束の下に読者は小説を追っているので、「そんな大事なことをなにサラッと受け止めてるの!?」と感じました。いや、その大発見は読者にも伝えておいてよ、と。クロマルが餌を食べなくなったと同時に縮小現象も一時的に収まり、餌を食べるようになったらまた縮み始めた、これはもしやクロマルの行動パターンが影響している? といった疑問を感じる場面はほしいと思います。

 クロマルは空を飛ぶのだ、という奇妙な事実を素直に受け入れている回と、「二ミリずつ」のお約束が破壊されている回とが同じですし、かなり急なスピードで別方向へ舵を切り始めたぞ、という違和感があります。エクーの登場に関して述べたように、もう少し早めに種を撒いておくと良いと思います。

 

 日常に根差した、淡々と続く儚い恋愛物語だと思っていましたが、それが悪い意味で裏切られたとも感じます。「それまでの流れ」を無視したものになってしまっているのが問題です。

『桃太郎』は桃から生まれたからこそ「なにか不思議な力を持っている、そういう話なのだろう」と感じますし、『竹取物語』では「竹から生まれた」という神秘が根っこにあるからこそ「月へ帰る」という展開に説得力が生まれるのだと思います。これは説明のためのこじつけであるとも取れますが、ともかく、そういうイメージです。

「日常と地続きの物語」として始まり、そうした前提・お約束のもと展開してきたお話が、急にSFやファンタジーの要素を帯び始めた、という齟齬を感じます、という意味です。

 

 

〇文章について

 するする読めて、特に問題らしい問題は感じませんでした。「、」の打ち方、タイミングが独特かなと感じます。

 

違和感はあちこちで感じた。
胃も腸も違和感すら感じない。

「違和感を感じる」という言い回しは間違ってはいないものの、「馬から落馬」的な意味の重複があるので、「違和感がある」「違和感を覚える」「違和を感じる」などに変更したほうが良いかと思います。ただ、プロの作品でも見たことはありますし、気にし過ぎと言えばそうかもしれません。「威圧感を感じる」も同様です。


「ひとり上手」という言葉は造語、という話をコメント欄で見ましたが、造語でもまったく問題ないと思います。

「脆々しい」と書いて、サッパリ意味が分からないということはないはずです。ちなみにヒダマルの造語です。「色々しい」を生み出した友人もいます。最近では「タピオカを飲む」を「タピる」と言いますし、言葉は日々変化しています。造語であっても、意味が通じれば問題ないと考えます。

 

口元が笑ったまま固まり、顔にカッと血がのぼる。真っ赤になって、困ったみたいに俯き、くるりと踵を返したと思ったら、僕から逃げるように走り出した。

 このとき「頭にカッと血がのぼ」ったのは、お姉さんなのか僕なのかがちょっと分かりづらいかな、と思います。ここでは「僕」の一人称なので、「血が上る」などの身体感覚は僕のものだと考えるのが通常です。しかし、口元が笑ったまま固まったのはお姉さんなので、「どうして『僕』が、お姉さんの身体感覚に言及できるのだろう」という違和感があります。その直後にも「カッと頭に血が上り」とあるので、多用の問題もあります。

 

――その後、カナリの容態が落ち着いた深夜。エクーとシュウの会話――
※シュウは一旦自宅に戻り、ベランダからこっそりカナちゃん宅を訪問しています。

 と四章にありますが、誰の視点でもない地の文が登場したのは初めてなので、ちょっと違和感があります。これも「話がちがう」「約束がちがう」という印象です。潔癖すぎるかもしれませんが、こうしたささいな配慮を意識すれば、「前半と中盤以降で話がちがう」などと感じられてしまうことも防げるのではと思います。

=坂之上家リビングにて=
=四十分後=

あとがき
カナちゃん=佐伯カナリ
シュウくん=坂之上シュウ

 という解説もですし、もっと言えばシュウくんのお母さんの視点に移ったことも若干の唐突感がありました。「そういう演出が出てくるお話なんだっけ?」と。

 シラタマに関してもそうです。物語の登場人物や主要な要素は、中盤あたりまでには揃えておくのがセオリーです。「真ん中までに出てきた要素・前提の中で、どういった展開・結末になるのか」をしっかり答えられるのがベストです。キャラの登場が後半になればなるほど、感情移入先としても弱くなります。

 例えば、ミステリー小説の基本は「犯人はこの中にいる」ですが、もしも犯人キャラが、物語の七割を過ぎたあたりに初登場したらどうでしょう。「約束がちがう」と感じると思います。それでも面白いのならいいのですが、基本的には悪手です。「こういうキャラや設定があったんです」は、後出しになればなるほどアンフェアで卑怯です。
後半のどんでん返しの形で新事実が判明するのは構いません。むしろ面白くなります。ただ、これも「その物語の要素・前提・お約束の中で」です。

 

 

「あ、それ! 僕の漏れてる分でどうにかなりませんか?」
「それも応急処置を聞いておいたぞ」
「うん、でもその前にカナリさん、なんとかしないと」

 ここはやりとりが繋がっていないような気がします。

 


 発見した分だけ、誤字を報告します。取りこぼしもあることはご注意ください。


なんとかメガネ医師に信じでもらうために、
そんなクロマルのジャプには、少し違和感がある。
バイタル(体温や脈拍、心拍数、呼吸数等)を安定させる薬品使う決断ができない。
マスター契約は済んでしまったらら、私に手出し出来るものではない。

 

 

 サービスのご利用、重ね重ねありがとうございます。

 設定もキャラも面白かったです。SF設定を読者に受け入れてもらえるよう、特に前半の構成を治しさえすれば、もっと面白くなると思います。

 改稿した作品や他作品でも、よければまたご検討ください。いつでも待ってます!