「梗概(こうがい)ってなに? ネタバレしていいの? 正しい書き方を解説」では、賞レースにおける梗概の基本をお伝えしました。
次に「梗概で気を抜くな! 応募原稿における梗概の大切さ」では、梗概の重要性について解説しています。
梗概シリーズ三部作として、今回は「梗概の具体的な書き方」について言及します。
「前提は理解したけど、結局なにをどう書けばいいものか分からない」という方は、ぜひ読んでみてください。
文字を埋めればいい訳ではない。
梗概の重要性は、上記のリンク先で解説しています。
小説本文以外では唯一のアピールチャンスなので、規定が800文字であれば、800文字目に「。」を打ってやる、くらいの意気込みで作りましょう。
しかし、ただ文字数を稼げばいいというものではありません。求められているのは「作品の魅力・面白さが伝わる梗概」だからです。
面白い小説は梗概も面白いため、それだけで注目してもらえます。
これは想像ですが、まずは応募作の梗概を読んで期待値順に大別し、それから本文を読みにかかる下読みさんなんかもいらっしゃるでしょう。
具体的な書き方。
梗概では、決められた文字数で「設定」「キャラ」「ストーリー」を伝えきる技術が求められます。超人気作『とある魔術の禁書目録』の梗概を書くとするなら、
※ネタバレを含みます!
「主人公の上条当麻、右手の幻想殺し。科学で異能を開発する学園都市(プロローグ)」
「インデックスとの出会い(起)」
「ステイル・マグヌスとの戦闘(承)」
「神裂火織との戦闘と、インデックスの真実(転・ミッドポイント)」
「『聖ジョージの聖域』とのラストバトル(結)」
「救われたインデックスと、上条当麻の記憶喪失(エピローグ)」
この辺りは、確実に盛り込まなければいけないでしょう。
(かなりざっくり分解したので、取りこぼしはあります)
まとめると、
超能力が一般科学として認知された、アンチ・オカルトの学園都市。唯一の無能力生徒・上条当麻だが、右手に宿る〈幻想殺し〉はあらゆる異能を無効にする不思議な力だった。
不幸な毎日に嘆いていたある日、純白のシスター〈禁書目録(インデックス)〉と名乗る少女に出会う。曰く彼女は魔術の世界からやってきて、隠し持つ10万3000冊の魔導書を狙う敵に追われているらしい。
少女の言葉を俄かには信じられない当麻は一旦別れるが、学校から帰ると血まみれのインデックスが倒れていた。追っ手の魔術師ステイル・マグヌスが操る炎の魔人に対し、〈幻想殺し〉の力で辛くも勝利を収め、彼女を守ることに成功する。
……どうも微妙ですが、こんなイメージです。
ここまでで、約250文字。規定が800文字ならあと550字、1,000文字なら750字も追記できます。
説明は過不足なく。
世界観を含め、前提となる設定やストーリーの因果関係はもれなく書いておきましょう。
何の予備知識もない相手に小説の中身を伝えるのですから、読み手の立場を想像して、疑問符が浮かばないように配慮するのがポイントです。
「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」「どうした」のか、その結果「どうなって」次に「誰が」「何を」「なぜ」……、と続けていけば、疑問符の浮かばないあらすじが作れるはずです。
「いつ」「どこで」は、初めに世界観を語っているため、その後は省略できると思います。
ラストまで一通り作ってみて、オーバーするようなら、各文中の不必要な単語を削りましょう。
逆に文字数が足りなければ、情報量を増やしましょう。本文を1,000文字程度にまとめたものが梗概ですから、たっぷり使っても冗長になる危険は少ないと思います。
ちなみに、重要なポジションに長い名前のキャラを出すと、このあらすじ作りが非常に困難になります。経験談です。
『とある』で言うと、「インデックス」はちょっと長いですね。梗概の上では「禁書目録」と書いてルビを振るのが無難かと。
どうしても名前が長くなる場合は、作中にも登場する略称を用意しておく・初めに紹介した後は短い肩書で済ませるなどの工夫が考えられます。
まとめ。
結論:読み手の立場に立って、「キャラ」「設定」「ストーリー」を伝えよう。
自分の小説は、何が面白いのか。どこがどう面白いのか。売りと強みはどこか。作者が把握していなければ、梗概は書けません。
梗概が苦手な方は、好きな作品の梗概を書いてみると練習になるでしょう。気が抜けない部分なので、どうか悔いのない梗概を作ってください。