ヒダマルのラノベ講座。

ヒダマルが考える、ライトノベルの作り方。来たれ小説書き。

冒頭に持ってくる言葉。

 

 前回の「冒頭は命! 1行目で心をつかめ!」では「冒頭の大切さ」を語りましたが、具体的な内容まで踏み込めませんでした。

 マインドセットも大切ですが、実地研修もまた大切ということで、今回は例を挙げながら「理想の冒頭」を考えてみます。

 

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「今すぐ注目しなければならない理由」を与えよう。

 一言で表すなら、これに尽きます。

 出会ったばかりの主人公へ感情移入なんて望むべくもないので、とにかく「あなた(読者)は、今すぐこのキャラに注目しなければならない」というメッセージを与えられれば、ひとまずの勝利と言ってもいいのではないでしょうか。

 

 キャラ意外に、独特な世界観や、ストーリーを象徴するようなイメージを魅せてもいいかもしれませんが、基本的にはキャラ、それも主人公(せめてヒロイン)を登場させるのが定石です。イメージに頼るほど、文章の力が必要とされます。

 

 そして、「状況」。

 シチュエーション。「この主人公が、どんなアクションをしているか」も含めて魅せてこそ、冒頭のつかみは機能します。

 

 

 好きなラノベの冒頭を思い出してください。

 主人公は危機に陥っていたり、泣いていたり、ヒロインに振り回されていたり、深呼吸していたり、剣や銃で戦っていたり、決意していたり、静かに意味深なことを語っていたり(これは危険かも。でも好き)、暴漢に追われていたり、死んだりしていると思います。

(もちろん、行動を通じてキャラや設定が自然に伝えられればなお良しです)

 

 アニメの場合は情景描写が挟まれる余地がありますが、基本的に同じはずです。ヒロインが空賊に追われていたり、腐海を探検して空を飛んだり、三輪の荷台でキャラメルを食べてたりします。

(こう書くとやっぱり、風景描写も大事な気がしてきます。「どこで」ですね)

 

 ヒダマルが初めて書いた長編小説の冒頭は、主人公が瀕死の状態で夜の森を駆けているシーンでした。しかもタイトルに名を冠する主人公です。まぁ死ぬわけはないんですが、「いきなりどうした?」という疑問を感じさせる狙いがありました。

 

 

1~3行目までが勝負。

 前回も書いたように、読者の心をつかんで離さないためには、1行目から仕掛けていきましょう。勝負は冒頭3行です。

 主人公が、どんな状況で、どんな行動をしているか、「今すぐ注目しなければならない理由」をこの3行にガッと込めて、全身全霊で書いてください。

 

 しかし3行ですから、なんでもかんでも具体的に詰め込むスペースはありません。情報は厳選しましょう。

 

 妥協は許さない方がいいです。ここは本当に、小説が読まれるか読まれないかの(本文に可能な、第一の)分水嶺なので。

 悪いことは言いません、文字通り一言一句、丁寧に、精緻に、何の違和感も残さず、「この物語の1~3行目はこれしかあるまい」というくらい、ピタッとはまる言葉を厳選してください。

 本文すべてにおいて言えるのかもしれませんが、そしてヒダマルは固執しすぎかもしれませんが、冒頭3行は特に、拘りに拘り抜くべき部分だと考えています。

 

 毎回毎回凝った1行目は書けないにしても、せめて3行目までには、「その小説でしか読めないであろう描写や台詞」を出したいところです。

 

 

冒頭の例。

 

サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。


著:谷川流 『涼宮ハルヒの憂鬱』より引用

 

  のっけから例外かもしれませんが、ラノベの書き出しと言えば外せないでしょう。文庫本ではこの独白が、きれいに3行目までを占めています。

「この小説でしか読めない描写」という点では最高クラス、ありありと魅せつけてきます。読ませる文章力さえあれば、必ずしも状況を具体化する必要はないと言えるパターンかもしれません。真似しない方がいいと思います。

  

 

お母さんが自殺した。

お父さんは家出した。

だからといってなにも困ったことはなく、日常はほぼほぼ変わらず続いている現状にちょっと拍子抜け。

 

『星のお姫様』より引用

 

 大御所の次に自作を持ってくるという暴挙です。

 ヒダマルが名刺代わりに使っている短編『星のお姫様』の冒頭3行。主人公がただ事でない状況にあり、なおかつ普通ではない感想を抱いていることが伝わるはずです。伝わってるといいです。

 強い言葉からして飛び道具的な感は否めませんが、「今すぐ注目しなければならない理由」を提供すると同時に、「この小説は御覧の通り、暗めの世界観ですよ」と伝えています。伝わってるといいです。

  

 

告白したら、ぶん殴られた。

恋が実るとウワサの木の下で、時間はもちろん夕暮れ時ね、「一人ではもう生きていけません」的な人生の大勝負に出てたら途中でいきなり、 

「あたしはっ、あなたを想うと夜もねぶぇっ⁉」

 てなもんだ。

 

『野女と美獣』より引用

 

 天丼です。

 2万文字ほどの短編の冒頭ですが、キャラの関係性を練っている途中で「これだ」と浮かびました。1行目の、行動と結果の差異に「?」を感じると思います。感じてください。

 疑問を感じて続きが気になるシチュエーションだと思います。人は物事に整合性を求めるので、この場合「殴られた理由」を求めて文字を追うはずです。

 

 

ちーちゃんこと歌島千草は小さなころから幽霊とか妖怪とか、そういうまがまがしいものにときめいてしまう難儀な性質を持っていた。道端にお地蔵さまを見つけるとどこからともなくトンカチを持ちだしてきて、いきなし地蔵を粉々に粉砕して『バチが当たるかな』とかわくわくしてしまうような奴だった。

 

著:日日日 『ちーちゃんは悠久の向こう』より引用

 

 そろそろ真面目に引用しようと思ったら結果的に大御所お二方で自分をサンドするという畏れ多い事態になりました。

 

 日日日先生のデビュー作『ちーちゃんは悠久の向こう』。

 語り手の主人公が、ヒロインであるちーちゃんの性格をエピソードで伝える形式になっています。方法としては『坊ちゃん』とほぼ同じですね。キャラの強烈な個性が伝わってきます。

 

 ぺたぺたした独特な文体と幼く不穏な印象、「なにかが起きそうだ」という予感がします。

 1行目には「この小説は、これに関する物語ですよ」「こんな面白さを提供しますよ」と伝える役割もありますが、ものの見事に達成していると思います。

 

※『ちーちゃんは悠久の向こう』は新風舎文庫と角川文庫から出ていますが、ヒダマルとしてはデビュー当時の文章が味わえる前者をお勧めします。

 

 

まとめ。

結論:冒頭の言葉選びは全身全霊を傾け、「今すぐ注目しなければならない理由」を与えよう。

 

 この理由を提供せずに「読んで!」と迫るのは不親切です。3行目までに興味を惹ければ、読まれる確率もぐっと上がると予想しています。予想は予想です。

 

 もちろん、敢えて平坦な言葉を並べているライトノベルも多くあります。機械的な通信音声や「〇月〇日、〇曜日。」などがそれに当たります。

 これらが悪いとは言いませんが、アマチュア小説家が取る戦略としては危険かなと考える次第です。

 自分の納得のいく冒頭3行を考えるのは楽しいので、ぜひ見直してみてください。

 

 

 引用した拙作のリンクを貼っておきますので、よければご覧ください。

 

kakuyomu.jp

 

kakuyomu.jp

 

 

 ……本当はこっちにしようかと迷っていた結論。