ヒダマルのラノベ講座。

ヒダマルが考える、ライトノベルの作り方。来たれ小説書き。

キャラの過去はいつ明かす? 【後乗せサクサク】

 

 秘められた過去を持つキャラって、イイですよね。

 キノが旅を始めた理由。シズ様の生い立ち。陸との出会い。師匠の本名。お弟子さんとの出会い。アリソン出生の秘密。ピトとエムの馴れ初め。似鳥の真実。時雨沢先生ファンになったいきさつ。

 

 クラウド、悟空、エドとアル。小説に限らず、魅力的なキャラには魅力的な過去設定が似合います。あなたの小説にも、そんなキャラがいることと思います。

 

 その過去を効果的に伝えるには、どんな点に注意すべきか? 過去設定がむしろ邪魔になってやしないか?

 今回の結論は、「過去の魅力は、後で出せ」です。

 

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過去の魅力は「後乗せサクサク」。

 基本的に、過去を先出ししてはいけません。

 過去の魅力は、そのキャラの魅力を更に際立たせるために用いられるものだからです。

 

「キャラを好きになってもらうために、過去を伝えよう!」これは順序が逆です。

 そもそも「今の魅力」が伝わっていないキャラの過去には、興味が持てないためです。

 

「キャラの魅力が伝わっており、ある程度以上の感情移入が済んでいるキャラ」が秘められた過去を明かすからこそ、読者は興味を引かれるのです。作者はそのキャラについてすべて知っているので、この点を忘れがちです。

 どんなに魅力的であれ、キャラの過去設定は「後乗せサクサク」だと心得ましょう。キャラの魅力が既に存在し、そこに追加するからこそ、過去設定が活かされます。

 

※……いちおう解説すると、「後乗せサクサク」とは、どん兵衛の天ぷらそばに付いている天ぷらを「そばが完成した後で入れることで、サクサク食感が得られて美味しい!」という意味です。「そば単体でも美味しい」が前提です。

 

 

過去の魅力は、後で出せ。

『この素晴らしい世界に祝福を!』のキャラ・めぐみんは、貧乏だった過去があります。同じくダクネスは、実は名のある家柄の出身でした。

 それらが明かされたのは、巻を重ねた後、キャラの魅力が十分に伝えられた後です。過去設定が登場する前から魅力があったために活かされる、「後乗せサクサク」の典型例だと思います。

 

 一冊目や応募原稿の中ではそんなに時間はかけられませんが、考え方は同じです。後乗せサクサクを狙いましょう。 

 主人公の魅力が十分に伝わる前に「実はこうした事情があったのだ……」と過去編を始めるのは悪手です。空間の移動・時系列の前後はただでさえストレス。感情移入前やキャラを好きになる前に過去を明かされても、その文章は「よく知らない、どうでもいいキャラの過去」です。

 非常にもったいないことになるので、過去を教える前にたっぷり楽しませましょう。

 

 もちろん例外もあります。

『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョンの過去(?)は一巻一文目に記されていますが、ハルヒのそれは「後乗せサクサク」です。キョンにしても、巻を重ねるにつれ中学時代の人間関係が明らかになっています。

『絶対ナル孤独者』一巻のプロローグでは、主人公の意味深な過去から始まります。しかしこの芸当は、プロの技術と信頼があってこそ。無名の作者がやるにはかなりの冒険です。基本的には、今を生きているキャラの魅力での勝負になります。

 

 

まとめ。

結論:過去を伝える前に、キャラを好きになってもらおう。

 

「このキャラの魅力は、重い過去にあるんだよ!」と言っても、なにはともあれ、今のキャラに興味を持ってもらうのが先です。どんなに魅力的な過去であれ、先に出されるのはちょっとツラいものがあります。

 過去を伝える前に、現在のキャラを好きになってもらいましょう。

 

 

 ……という工夫が全開なのが、拙作『野女と美獣』です。

 45分くらいで読めますが、「なるほどこういうことか」と腑に落ちることと思います。初めて書いた百合小説です。

 

kakuyomu.jp

 

『フラン -白夜の吸血鬼-』でも大いに使用しています。

 全体的な完成度は高いとは言えないものの、クライマックス付近での盛り上げ方は「後乗せサクサク」を多用しています。「このタイミングだから読ませられる」と判断した過去設定です。初めて書いた長編小説です。

 よければ参考までに、どうぞ。

 

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