ラノベに大切なのは、なんと言ってもキャラクター。読者はキャラを好きになり、キャラの活躍を期待し、キャラの幸せを願うものですから。
そしてキャラに命を吹き込むのは、そう、「名前」です。
特に主人公の名前は、作品内で最も多く使用する・読まれる文字列になるでしょう。決して適当に決めてはいけません。(←これは字面が悪いですね)
字面・読みやすさ。
まず「ぱっと見」の印象です。
「小早川聡介」と「髑髏澤轟汰」、どちらが主人公っぽいでしょう。
後者はちょっと、いやかなり、くどいですね。この文字列を何度も読むのはなかなか難儀です。「轟汰」のみならあるいは。
そして、前者は「爽やかで速そうな感じ」があると思います。後者からは「悪辣さ」「強さ」「湿り気、激流」を感じます。濁点もポイントですね。
次項にも通じますが、例えば「アーサー」と書けばリーダーシップと爽やかな印象、「ゴドブラド」と書けば重く悪そうな第一印象を与えます。
「名は体を表す」の言葉通り、音のイメージや漢字の意味に乗せて、キャラの属性まで伝えることが可能です。
音感・音のイメージ。
字面が「目で見たときの感じ」なら、音感は「耳で聞いたときの感じ」ですね。「口に出したときの感じ」で考えてもいいでしょう。
あ行はあいらしく、か行はかっこよく、さ行はさわやかで、た行はたくましく、な行はのんびりしたイメージがありません?(最後キマらなかった)
「小早川聡介」が速そうなのは、「早」もさることながら、名前のさ行のおかげでもあります。音感で言えば、「髑髏澤轟汰」との苗字の終わりが「かわ」と「ざわ」で少々被っている点は改善の余地がありそうです。(同じ小説に出すとすれば)
ちょっと探すとこんなサイトも出てきます。
カタカナも同様です。
「サトシ」より「ゴンザブロウ」のほうが重々しく力強いイメージがありますし、逆に「サトシ」はさ行のおかげで爽やかな雰囲気を出しています。
「リリパット」と「ブロブディンナグ」と聞けば、ガリバー旅行記を知らなくても、どちらが小人/巨人の国か予想がつくはずです。「ハリー」と「ヴォルデモート」、「ルーク・スカイウォーカー」と「ダースベーダー」、悪役はどっちでしょう。
五十音それぞれがもたらす印象を調べ、キャラのイメージに適用してみると、一気に魅力が上がるかもしれません。
ちなみに、ひらがな表記の名前は、他の文章に埋もれてしまうリスクがあります。
「るりか」というキャラがいたとして、「そこにいるるりかちゃんもかわいいよ」と書いたなら字面は最悪です(状況がよく分かりませんが)。
「そこにいる、るりかちゃんも可愛いよ」などとする必要があるので(必要とまでは言いませんが、無難です)、ひらがな表記はあまりお勧めしません。
ヒダマルが「ひだまる」ではなく「ヒダマル」なのも、実はこれが理由です。漢字では「飛騨丸」です。
更にちなみに、「アリス」は激戦区です。避けましょう。
難読・常識外れ。
難読漢字や難読地名、常識的にあり得ない文字・意味の組み合わせによって、非常に独特な雰囲気を醸すことができます。
ただ、西尾維新先生の作品群や『僕のヒーローアカデミア』のように、かなりの「っぽさ」が出ます。「っぽく」なるのが悪手とまでは断定しませんが、認識はしておくべきです。「二番煎じだな」と感じられてしまう危険はあります。字面はともかく、読みやすさが犠牲になることも多々あります。
ヒダマルは「塔道バベル」(とうどう・ばべる)や「一二三四五六」(ひふみ・しごろく)や「一一ヶ一一」(いんいちがいち・はじめ)などのアイデアだけは持っていますが、使い所が皆無です。
マイルドな特殊読み。
個人的には、「一文字でそれと分かる漢字」に「音が似ているもう一文字」を重ねる方式をよく使っています。
「鋼(はがね)」と「音(ね)」を組み合わせて「鋼音(はがね)」。
「波(なみ)」と「音(おと)」を組み合わせて「波音(なおと)」。
「霞(かすみ)」と「美(み)」を組み合わせて「霞美(かすみ)」。
「恙(つつが)」と「牙(が)」を組み合わせて「恙牙(つつが)」。
初見では読みにくいものの、一度答えを聞けば腑に落ち忘れにくい特徴があります。常識的な名前からあまり逸れることなく、かつ適度な個性付与が可能なナイスアイデアだと自負しています。
作品内での重複を避ける。
なぜか意外と見落とされがちな注意点です。
これ、失敗している方が多いです。ここに気を付けるだけでもリーダビリティが上がると思います。
字面や音感はキャラごとに変え、重複を避けましょう。
主人公が「聡介」なら、相方や悪役は「さ行以外のイメージ」を与えるのです。ちょうど、ポケモンのサトシとゴウのように。
漢字も同様です。
名前が「明理」のヒロインがいたなら、他に「明」「理」を含むキャラの存在は許されません。(例外として、親子や姉妹などは大目に見られそうです)
これが見落とされていて、メインキャラが四人しかいないのに被っているなんてこともあります。好きな作品のキャラ名を分析してみることをお勧めします。
ひらがな・カタカナ表記の場合は漢字ほど厳格ではないものの、例えば同じ小説の中に「サイモン」と「サイモル」がいたら最悪です。
字面と音感のほとんどが被っている上に、四文字目を読むまでどちらのキャラか判別できません。不親切というより嫌がらせです。
より主軸を担うキャラのイメージを優先して、どちらかに改名してもらいましょう。
まとめ。
結論:字面や音感を考慮して、キャライメージに打ってつけの名前を考えよう!
専門用語集や外国の地名を流し読みしながら「これ、名前に使えそう」といった言葉を探すのも方法です。もちろん「ネーミング辞典」なんかも重宝します。
思い入れのあるキャラ名ですから、後から変えるのは抵抗がありますよね。「とりあえず書き始める!」も才能ですが、じっくり名付けを楽しむのもまた一興です。
取ってつけたような名前でなく、打ってつけたような名前を探してあげましょう!